リアルな動きには目を見張るが、それだけで100分は持たない。ジョン・マスカーとロン・クレメンツ監督「モアナと伝説の海」(2016)。

この映画を監督したコンビは、1992年に「アラジン」を作っています。僕のその年のベストワンでした。しかし、この映画を劇場まで出かけて見る気にはなれなかった。テレビで見るティーザーやその他の情報から、テレビでいいやと思ったしだい。結局見たのはレンタルDVDですが。

冒頭のシーンには目を見張りました。幼いモアナが海辺を歩くシーンのリアルなこと。よちよち感と、手を伸ばして貝殻にさわろうとする仕草の“らしさ”は抜群です。これがモーション・キャプチャーであろうとなかろうと問題ではありません。見た目でリアルに感じたということが大切なのです。だからこの場面だけで、この映画を高く評価してもいいと思う。

そんな幼子を描いた10分の短編なら、この場面だけですばらしい作品となったでしょうが、上映時間が107分もあります。最後の10分はクレジットだから除外するとしても、それでも95分という長尺。昨今のディズニー・アニメは、劇映画で言えば2時間半を超すサイズしか作っていないと、僕は考えています。

しかし、いかに驚愕の動きやリアルさを提供してくれても、100分を超す尺を持たせるなら、観客を楽しませないとダメです。楽しませるというのは、ドラマに乗せることであって、映画ネタをちりばめて釣ることではない。映画ネタだって、これはあの映画という指摘だけではダメなのです。

たとえば海に道ができて歩けるとなると、僕の世代には「十戒」があります。ご丁寧に、セシル・B・デミルの海が割れたシーンと同じように滝の動きを逆にしているけど、だから喜ぶか? あるいはベイマックスのような波が窮地を救うけど(「アビス」の水でもある)、ベイマックスそのものの方がすてきだったぞ。もっと言えば、凶悪な海賊たちのキャラがなかなかかわいいのに、どうして「マッドマックス」(最新版ね)のような活劇にしてしまうんだ? これじゃ「ミニオンズ」の二の舞じゃないか、製作責任者のジョン・ラセター、恥を知れ。

それと歌に魅力のないミュージカルというのもいただけません。最後の主題歌だけは、予告編などで刷り込まれていたから、ああこの曲かと思ったけど、その程度のミュージカルは「ラ・ラ・ランド」だけにしておいてくれ。「アラジン」は、そんな話題だけの映画とは違って、何十倍も楽しかったぞ。ロビン・ウィリアムスドウェイン・ジョンソンの差だけが原因ではないからね。

エンドクレジットも芸がないよね。これじゃ“さっさと帰れ”と言ってるようなもので、その後ろの「リトル・マーメイド」ネタが死んでしまってます。←僕が、今回の映画ネタで唯一クスリとしたのがこれ。鶏のヘイヘイより、豚に活躍してほしかったしね。

とりあえず不満ばかりですが、やはり幼子の動きについては評価したいと思います。だからって、つけあわせの短編「インナー・ワーキング」(2016)みたいに、チャップリンですらやらなかった“退屈な職場”という安易な描き方はダメですよ。もっと「アパートの鍵貸します」やオーソン・ウエルズの「審判」を勉強してください。「インナー・ワーキング」は、ジョージ・オーウェルの「1984」をリーダース・ダイジェストで読むよりひどい内容だと思う。動きだけを見せたいなら、別の題材にしなさい。

ところで、どなたかロバート・フラハティの「モアナ」(1925)との関連性や違いについて教えてください。